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無題

ホイッスルが鳴った。
スタジアムの階段を足早に上がるのも慣れたものだ。
季節はずれの桜並木は一仕事を終えた褒美を貰っている。
緑のにおいを感じる頃にはフットボールの余韻も消えている。

元チームメイトのプレーを見る事は唯一の楽しみであった。
でも、気付いた時には行く事だけが義務になっていた。

地下鉄の駅を出てすぐだった。取り囲まれている。
若い男5~6人。ガムを噛んだ大柄な男がリーダーなのだろう。
「あのさー。電車賃が足りないんだけど貸してくんない?」
今時、陳腐な言い方だ。
無性に腹が立ってくる。GKとの1対1をはずしたさっきのFWが脳裏に浮かんで来る。
何も言わず渾身のシュートを決めるようにガムの男を蹴りあげた。

呆気なくかわされた。
空振りした体勢は倒れるしかない。
あとは蹴り出される無数の足からダメージを減らそうと身体を丸める。
どれだけ時間が経ったのかわからなかった。
鉛色の空が見えるだけ。
辺りには嘔吐物の臭いが漂っている。腹と腕が熱い。背中は何も感じない。あるのかどうかすら感じない。
ようやく若い男の集団に蹴られた事を思い出した。

確かに男の足を捕らえた感触は無かった。足の振りは悪くなかった筈なのに。

15年前の日本選手権が最後だった。
20mのインステップシュートは重力に逆らうように左右に揺れ落ちた。
ボールに全く回転が掛からない無回転シュート。
蹴った本人も何処に行くのか分からないそんなボールが自分に合っていた。

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コメント

きましたね
北方の遺伝子を消化して自分の物にしたハードボイルドが!

投稿: kiichi | 2007年6月 9日 (土) 22時41分

>kiichiさん

まずはパクリからです(笑)
そこから何かが生まれればいいのです。
だから、大目に見てね。

投稿: ikeikedondon | 2007年6月10日 (日) 00時06分

トラバありがとう!
なぜかトラバ送ると本文の段落がめちゃめちゃになるので、こちらからはできませんが、お許しを!
ρ(..、) ヾ(^-^;)

投稿: kiichi | 2007年6月11日 (月) 22時06分

>kiichiさん

気にしないで下さい。
ここには人は来ませんから。(笑)

しかし、酔った勢いで書いちゃったから、次の展開が難しいです。

投稿: ikeikedondon | 2007年6月11日 (月) 22時43分

ヒトは来ます
ただし マナティ体型ですが・・・。

投稿: teru | 2007年6月29日 (金) 23時10分

>teruさん

きたー。人だー。
こっそりやっているので、また見に来てね。

投稿: ikeikedondon | 2007年6月30日 (土) 07時46分

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